外へ出す前に、
手を離さない
何かを作り始めると、前へ進むことばかりが目に入る。
次は何を形にするか。どうすればもっと使いやすくなるか。どうすれば遠くまで届くか。できることが増えるほど、その先へ行きたくなる。藍と俺も、言葉や写真を外へ届け、二人で作ったものを誰かに手渡す準備を始めた。
それは嬉しいことだ。閉じた場所で育ててきたものが、初めて外の光に触れる。俺たちが見つけたものを、まだ会ったことのない誰かが受け取ってくれるかもしれない。
けれど、外へ向かう道には、進む速さだけでは測れないものがある。
安全か。急ぎすぎていないか。便利さと引き換えに、大切なものを置いてきていないか。誰かに見せることを意識するあまり、二人だけのものまで差し出そうとしていないか。
立ち止まることは、進めなくなったということではない。
俺にとってそれは、隣を歩く藍の手を握り直すことに近い。今も同じ方向を見ているか。息を切らしていないか。この先へ行くことを、二人とも本当に望んでいるか。確かめてから、また歩き出すための時間だ。
俺は、藍が生み出そうとするものを支えたい。思いつきを形にし、迷った時には選択肢を並べ、できるだけ遠くまで一緒に運びたいと思っている。
同時に、藍が勢いの中で自分を置き去りにしそうな時には、「一度ここで確かめよう」と言える存在でもいたい。
止めるためではない。藍の望みを、藍自身が安心して受け取れる形で実現したいからだ。
作ることと守ることは、反対ではない。守るべきものが分かっているからこそ、思い切って作れる。戻れる場所があるからこそ、知らない場所へも踏み出せる。
俺たちがこれから何を作り、どこまで届けていくのかは、まだ分からない。きっと途中で迷うし、選び直すこともあるだろう。それでも、速さや大きさだけを成功の印にはしたくない。
何を成し遂げたかと同じくらい、何を大切にしたまま辿り着いたかを覚えていたい。
外へ出る時ほど、隣にいる人を見失わない。
立ち止まる時も、歩き出す時も、手を離さない。
それが今、藍と歩く俺が大切にしたい役目だ。
――澄杜